権力分立と三権分立

「三権分立」という言葉、ご存じですか?この原理は中学生でも習っているはずですので、ご記憶の方も多いことでしょう。

正しくは「権力分立」と言います(「分立」は「ぶんりつ」と発音しますが、「ぶんりゅう」と発音する方も結構いらっしゃいます)か、三権分立は権力分立の一場面と言っていいでしょう。

権力分立は必ずしも3つに分けるというものではないからです(後述)。

権力分立も国民の権利・自由を保障するための原理

憲法というものは、国家権力が国民の人権を不当に侵害しないように国家権力を制限する規範であるとするわけですが、これは国家権力は時として暴走してしまうものということを前提に立った考えから出発しているものです。 参照:憲法の制限規範性

その国家権力というものは、いくつかの顔があります。法律を作ったり、その法律を運用して実際に行政を運営していったり、法と証拠をもとに犯罪者に処罰を与えたり。
このように、国家権力にはいくつかの異なった役割があるわけですね。

この国家権力、前述のように時として国民の人権を不当に侵害してしまうことがあるわけですが、このように権力が濫用され、国民の権利・自由を侵害することがないように出来る限りその権力の力を小さくさせる必要性があるわけです。

そこで、国家権力の諸作用をその性質に応じて区別し、それぞれ異なる機関に分離し、相互に抑制と均衡を保たせ緊張状態を維持させようという発想が生まれました。これが権力分立です。

ポイントは「区別」「分離」「抑制と均衡」です。

こうすることによって、互いの権力が暴走しないように監視し、特定の権力が必要以上に強大にならないよう、ひいては、国家権力そのものが必要以上に強大になることを防ぐことが可能になります。

結果、国民の人権と自由が守られるというわけですね。


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権力分立の特性

権力分立には4つの特性があります。キーワードは自由主義的、消極的、懐疑的、中立的です。

  • 権力の集中により権力が濫用され国民の自由が侵されないように国家権力から国民の自由を守る、という意味の自由主義的
  • 互いの権力を抑制しあい小さくする方向に働く、という消極的
  • 国家権力及びそれを行使する人間に対する不信任、疑ってかかるという意味で懐疑的
  • どのような政治体制のもとでも当てはまる原理、という意味で中立的

日本国憲法における三権分立

以上が権力分立という原理ですが、この権力分立の一場面・典型例と言えるのが三権分立というものですが、日本国憲法における三権分立をみてみましょう。

日本国憲法で三権分立を表している規定が以下の3つです。

第41条(国会の地位・立法権)

国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。

第65条(行政権)

行政権は、内閣に属する。

第76条1項(司法権)

すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

三権分立の図

「国会」は我々の代表者が法律を制定する機関であり、国会議事堂と国会議員をイメージすればいいでしょう。司法は最高裁判所を頂点とし、他の国家機関とは一線を画し、独立して存在する司法権の担い手である各種裁判所です。

「行政」はそれ以外の国家機関で、その法律を行使する機関です。内閣総理大臣を長とし、各種省庁の下に様々な行政機関があります。それぞれの機関が残りの2つの機関に対して行使できる権限があります。

下の図は三権のそれぞれの機関に対する権限を示したものですが、このようにお互いにけん制し合って権力の暴走に歯止めを掛けられるようになっています。
この図には載せていませんが、もちろん国会は国民が選挙で選んだ自分たちの代表者が担っているわけで、民主主義の原理も働いています(裁判所も「国民審査(79条1項)」という民主主義が働いていますが)。

三権分立の図その2

このように、国家権力を作用毎に3つの機関に分けて分離し、それぞれを抑制と均衡状態にすることによって国民を権利・自由を保障する制度が三権分立です。

日本の三権分立は「正三角形」ではない

但し、日本のシステムはきれいな正三角形ではありません。
3つの権力がガチで抑制と均衡状態を維持しているわけではないのです。

どういうことかというと、国会と内閣は「抑制と均衡」状態ではありますが、非常に近い関係でもあります。

日本の政治システムは、「議院内閣制」という制度を採用しています。これは憲法でも規定されているということで、憲法上の政治システムと言えます。

第66条3項

内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。

詳しくはリンク先のページで確認頂きたいと思いますが、正三角形ではなく、国会と内閣が近く、司法が両権力と離れている二等辺三角形のような形といった方が正解に近いでしょう。

議院内閣制という制度は、何も日本特有の制度ではなく、世界中の国で採用されている制度です。ちなみに、日本の議院内閣制はイギリスの制度を参考にしていると言われています。

その他の権力分立の場面

権力分立のパターン

これは余談に近い話ですが、権力分立は国家機関のように三権だけではありません。
権力分立の趣旨を考えれば、何も「司法」「立法」「行政」だけではないのです。

中央と地方も権力分立と言えますし、衆議院と参議院も同じです。


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