予備試験と法科大学院を比較してみた。どっちのルートが良い?
  裁判官・検察官・弁護士という法曹三者登用試験の司法試験の受験資格を得るために予備試験があるわけですが、司法試験受験資格を得るためには、もう一つの方法があることはお話した通りです「予備試験とはどんな試験?最新日程や受験料・合格率を紹介!」 それは、法科大学院の課程を修了すること。 予備試験の合格、法科大学院の修了、どちらでも司法試験受援資格は得られますが、逆にどちらでも可能ならば、「ではどっちのコースが良いの?」と考えるはず。いずれもそれなりの「関門」があるので、その関門如何によっては本当に迷いますよね。 ここで、その2つのルートについて比べてみたいと思います。予備試験については既に述べているので、法科大学院のお話から始めてみようと思います。

法科大学院とは

法科大学院講堂 「法科大学院」とはいわゆるロースクール。職業法律家養成学校です。「大学院」とありますから、一般的に言う大学院とお考え下さい。

入学資格

やはり入学試験があります。受験資格は大学を卒業、あるいは卒業見込みの者。 コースは2種類あります。
  • 法学未修者コース(3年コース)
  • 法学既修者コース(2年コース)
法学未修者コースは大学時代の法律学習経験は問われません。逆に、法学部卒業者でもこのコースで学んでも大丈夫です。既修者コースは法律学習経験が必要で、それは入試にて試されることになります(法律科目試験)。

入学試験

法科大学院は以下の内容で入試が実施されます。
  • 適性試験
  • 自己評価書
  • 語学
  • 小論文試験
  • 面接
  • 法律科目試験
各法科大学院によってまちまちな部分もありますが、概ねこんな感じです。入学するだけでもそれなりにいろんなことがあることがわかります。

どちらのルートを選ぶべきか比較した

予備試験と法科大学院どっちがいいか 予備試験と法科大学院、司法試験合格に向けてどちらが実利があるか比較してみましょう。

門戸の違い

予備試験と法科大学院、決定的に違うには「門戸の広さ」です。

法科大学院

法科大学院は、大学院ならではの入学要件はあります。大学卒業とその見込み者に限られます。中卒者や高卒者は法科大学院の受験資格はありませんし、法科大学院ルートでは大学在学中に司法試験合格という芸当もできないことになります。 また、最低でも2年or3年は卒業までは必要ですし、学費も結構掛かります(200万~300万円程度)。 時間的な関係で日中仕事をしている社会人は事実上通学は無理でしょう。 つまり、法科大学院ルートは属性的門戸は極めて狭く、条件に合った一部の者だけのルートといえます。

予備試験

予備試験は、受験資格は特にありません。学歴・国籍・性別・年齢・・・そういった資格制限はないです。中卒でも主婦でも弁護士目指せますし、在学中司法試験合格も可能です。 もちろん、受験勉強は必要ですが試験自体は休日開催単発で3回ですから、社会人がわざわざ仕事休んで受験とかそんな煩わしさもありません。受験対策の予備校にしたって、法科大学院の学費に比べれば何分の1から受講が可能。 予備試験ルートは属性的門戸は非常に広く、その気になれば誰でも弁護士を目指せるのです。

司法試験合格率の違い

2つのルートとも司法試験の受験資格取得の手段と考えれば、最大の実利は司法試験合格のはず。ということで、次は司法試験の合格率で比較してみます。 それぞれのルートから司法試験に挑んだ場合の合格率を比較してみました。法務省公表のデータから引っ張ってきましたが、予備試験合格者の方が合格率が高いんですね。予備試験合格者の方が法曹三者になれる可能性が高いということになります。データに基づいて説明しましょう。 下は、直近の過去5年間の司法試験合格者のデータです。予備試験合格者と法科大学院修了者の合格率を分けて出してみました。法務省の司法試験ページより
平成29年度
受験者数 合格者数 合格率(%)
法科大学院 5,567 1,253 22.5
予備試験 400 290 72.5

平成30年度
受験者数 合格者数 合格率(%)
法科大学院 5,369 1,189 22.1
予備試験 442 336 76.0

令和元年度
受験者数 合格者数 合格率(%)
法科大学院 4,081 1,187 29.1
予備試験 385 315 81.8

令和2年度
受験者数 合格者数 合格率(%)
法科大学院 3,280 1,072 32.9
予備試験 423 378 89.4

令和3年度
受験者数 合格者数 合格率(%)
法科大学院 3,024 1,047 34.6
予備試験 400 374 93.5

いかがでしょう?母数(受験者数)が桁違いなので適正な比較とは言い難い面もありますが、予備試験合格者の方がはるかに司法試験合格率は良いです。 令和3年度司法試験は、合格率が初めて4割を超えた!なんてことがニュースになっていたように、率の底上げは全体的にありました。それでも、法科大学院組は受験者の3分の二弱が落ちてしまうのに対し、予備試験組は合格率は実に9割越えです。乱暴な言い方すれば、予備試験通れば司法試験通ったも同然という感じですね。 そういうこともあってか、法科大学院生が予備試験を受験するという何とも非効率な現象がかなり増えています。結果、年々予備試験ルートの受験者数は増えてます

なぜ合格率に差が出るのか

これだけの差が出ているのはなぜなのでしょうか。理由はたくさんあると思っていて、それぞれ列挙してみます。
予備試験との類似性
予備試験司法試験の類似性。違う試験ではあるのですが、試験の類似性はあります。大学院の過程修了と比較すれば司法試験に馴染めるのは予備試験に合格して間もない受験生ではないでしょうか。予備試験合格者ならそう大きな違和感を持たないで試験に臨めるはず。
予備校には司法試験対策講座がある
予備試験合格者は、限りなく100%に近い確率で予備校での準備を経ています。その学習過程で、予備試験用、司法試験用、法科大学院・予備試験・司法試験兼用と、各社カリキュラムに異なりはありますが、司法試験対策の講座を設けています。 何が言いたいかというと、予備校を利用すれば、司法試験用の対策が立てられており、予備試験とは別個のカリキュラムも経ている場合が多いということです。もちろん、法科大学院組も司法試験講座は受講できますが、あらかじめ司法試験対策が組み込まれていたり、自社の予備試験講座での合格者は司法試験講座が無料になったりと、予備試験組の方が何かと有利には働くと思います。 「予備試験予備校を徹底比較!元受験生おすすめ7選【2023年版】
法科大学院間の格差
法科大学院は、大学院間の格差があります。法科大学院でも、入学難易度が高いところは司法試験合格率もそれ程低くはありません。予備試験までとは言わないまでも、50%程度と近い合格率を誇っています。しかし、そうでないところは合格率は20%を切るところもあります。 理由はいろいろあるんでしょうが、法科大学院は予備試験よりも司法試験への対応力が劣るといえるのかもしれません。あくまでイメージとして捉えて頂きたいのですが、法科大学院ルートは門戸が広く出口が狭い、予備試験ルートは狭き門で出口が広いという感じですね。
予備試験の難易度
これは一つ上の事象とも被る部分がありますが、予備試験はかなり難易度が高く、そこを突破してくる司法試験受験生は、試験結果も良いという傾向はあるのでしょう。法科大学院がダメとは言いませんが、その部分は予備試験組には敵わない面もあるのかもしれません。

まとめ・結論

というわけで、法科大学院コースよりも予備試験ルートの方が、色んな立場の者が法曹三者への道を目指すことができます。 予備試験は狭き門ですが、合格してしまえば司法試験の合格率は法科大学院よりも何倍も高いです。本気で司法試験合格を目指すのであれば、第一にここを突破することに最大限注力するべきでしょう。 法科は大学院を選ばなければ比較的簡単に入学は可能ですが、最終目標が司法試験合格である以上、厳しい闘いが待っているかもしれません。一部難関大学院ですら合格率は50~60%程度ですから。 というわけで、司法試験合格の前提なのですから、そこを踏まえるとおすすめしたいのは予備試験合格への道ですね。社会人だったら絶対こちらですね。
法科大学院 予備試験
難易度 大学院によって異なる 合格率4%程度
司法試験合格率 大学院格差あり。平均で20%台、良いところで60%、平均34% 80~90%台
費用 200万~300万円 予備校代50万~150万円程度