代理人の悪だくみ

宅建行政書士

民法総則に「代理」という章があります。この代理の中でもっとも重要&頻出は「無権代理」の部分だと思います。

この無権代理について、難しいと感じている方も少なくないようですので、無権代理の基本部分である一般的効果についてまとめてみました。このページではあまり細かいところまでは突っ込まずに条文知識程度の基本編ということにさせてください。

無権代理とは

そもそも無権代理とはどういう場面をいうのでしょうか。無権代理とは、代理権がない者が代理人として振舞うことです。無権代理人は代理権がないので本人には効果帰属しません。

代理権ない者がただ「自分は〇〇の代理人だ」と想像しているだけならまだいいのですが、実際に何らかの法律行為に及んでしまえば問題が発生します。だって、その法律行為は本人効果帰属しないのですから、本人に不利益が発生するでしょうし取引した相手方だって同じことです。

無権代理の場面1

一連の無権代理の規定は、そういった場合の効果を定めています。

広義の無権代理と狭義の無権代理

ひとくちに無権代理と言っても2つのパターンがあります。ここで確認しておきましょう。無権代理には「広義の無権代理」「狭義の無権代理」なんて言い方をすることがあります。意味は文字通り「広い意味で」「狭い意味で」でいいのですが、ようは、無権代理というカテゴリー(広義)の中に無権代理という項(狭義)があるということ。

狭義の無権代理が一般的に言っている無権代理になります。もうひとつの見出しが「表見代理」というもの。この表見代理も非常に重要な論点があるので別ページで解説しますが、ちょっと特殊な狭義の無権代理と捉えてください。

特殊とは言いつつも、イメージとしては、無権代理の問題は、まず表見代理が成立する余地があるかを検討し、無理ならば狭義の無権代理を検討するという立ち位置だと考えればいいと思います。この際にご確認ください。下がイメージ図です。

広義の無権代理、狭義の無権代理、表見代理の関係図解

ちなみに狭義の無権代理の規定は113条から118条まで、表見代理は109条、110条、112条。これらをひっくるめて広義の無権代理です。

狭義の無権代理の効果(一般的効果)

ここでは狭義の無権代理の効果をまとめておきます。条文でいうところの113条以下ですね。条文見ればわかることですけど、整理しておくという意味でご確認いただければ。

試験では本当に頻出ですので、誰が誰にどんなことが言えるのかはしっかり整理しておいてください。

まず、113条以下で規定されていることを列挙します。

  1. 本人の追認と追認拒絶権(113条)
  2. 相手方の催告権(114条)
  3. 相手方の取消権(115条)
  4. 無権代理人への責任追及(117条)

それぞれ見ていきましょう。

1. 本人の追認・追認拒絶権

民法第113条
 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
2 追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

追認

追認とは追って認めること。無権代理人から見れば事後承諾を得る、みたいなイメージでしょうか…無権代理行為は本人に効果帰属しませんので、やられた本人自らが自分に効果帰属させるように無権代理行為をした者に代理権を与えることです。

追認には遡及効がありますので、第三者の権利を害さない範囲で、遡って無権代理行為をした時点で代理人だったとみなされます。こうすることによって、無権代理行為は有効になり丸く収まるということ(116条)。

民法第116条
 追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

本人は誰に追認しなければならないか。条文上では無権代理人にです(113条2項)。もっとも、113条但書を鑑みれば、相手方でも大丈夫ということになっています。

追認拒絶

追認の真逆、「追認はしないから」というのもありです。本人に効果帰属しないということには変わりはありませんが、追認拒絶によって無権代行為は確定的に効果帰属しないことになりますので、これはこれで法律安定性が図れます。

民法113条の図解

2. 相手方の催告権

民法第114条
 前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。

これは相手方のなしうる権利です。催告とは、「どうするの?ハッキリしてよ」と催促すること。相手方にとってはこの取引が不安定なままでは我慢なりません。もちろん有効な取引とさせたいのでしょうが、どうなろうとハッキリさせたいのです。だから本人に追認するか拒絶するか早くしてくれと催告する。こういった権利が認められています(114条)。

この催告、返答までの期間を定めます。具体的な期限はケースバイケースでしょうが、あまり時間をかけるのもよろしくないので、そこは「相当な期間」としか言えませんが。この期間内に返答なき場合は、追認拒絶したものとみなされ、本人に効果帰属しないことが確定します。

これは、本人に対して取り得る権利です。無権代理人に催告しても仕方がありませんからね。また、相手方が無権代行為であったかどうかは、子の催告については関係ないため、善意でも悪意でも大丈夫です。

民法114条の図解

3. 相手方の取消権

民法第115条
 代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。

ホ人に催告する他に、取消し権の行使もできます(115条)。取消権というのは、相手方が一方的に無権代行為を無かったことにすることです。子の取消権の行使によって、無権代行為は無効になります。

ただし、この取消権の行使には条件があります。本人が追認する前に行使すること、無権代行為について取引当時に善意だったこと。

民法115条の図解

4. 無権代理人への責任追及

民法第117条
 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2 前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。

ここまでは無権代理行為を確定させるものでしたが、そもそも悪い輩は無権代理人です。お咎めなしでは済まされません。というわけで、相手方は無権代理人へこの責任追及ができます(117条)。

どんな責任追及かと言いますと、

  • 無権代理人の履行請求
  • 損害賠償請求

のいずれか、相手方の選択でどちらかを選ぶことになります(117条1項)。

この履行請求とは、本人の無権代理人としてではなく、固有の取引相手としての履行を指します。どういうことかというと、「本人から何とか譲り受けて履行しろ」ということです。本人関係なく、無権代理人と相手方の間絵の履行ですね。

117条の要件

この責任追及、要件があります。要件満たさないと相手方は117条の行使ができません。その要件とは、

  1. 追認がなされていないこと
  2. 115条の取消権が行使されていないこと
  3. 相手方が無権代理に付き善意無過失だったこと(117条2項)
  4. 無権代理人に行為能力があること(同上)

この要件でわかることは、追認や取消しの場合は責任追及はできないが追認拒絶の場合は責任追及ができることになります

民法117条の図解

※117条は2020年に改正が予定されています。改正法に合わせて後日加筆&修正を行います。

まとめ

以上、無権代理の規定113条から117条までの一般的効果についてまとめてみました。ほぼ条文をまとめた基本知識ですが、宅建士試験や行政書士試験では十分正解できる知識になります。

どの試験でも本当に頻出箇所ですし、合格者はしっかり押さえています。誰が誰にどんなことができるか、その場合の要件は何かを正確に押さえて整理しておきましょう。

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