
行政書士試験には憲法が出題されます。行政書士の憲法って難しいのでしょうか?
また、簡単・難しいは置いておいて、勉強しなければ合格はできません。その学習ポイントや効果的な勉強方法についてもお半視させていただきます。
行政書士試験とは
そもそもですが、行政書士試験とは何でしょうか。
行政書士試験とは、国家資格行政書士の資格を得るための試験です。毎年11月の第2日曜日に実施され、翌年の1月末に合格発表になります。試験科目は6科目、
- 憲法
- 行政法
- 民法
- 商法会社法
- 基礎法学
- 一般知識等
毎年約5万人もの受験生が受験し、5千人程度が合格していきます。合格率は約10%ですね。ちなみにですが、直近の令和4年度試験では、受験者数47,850名が受験し、5,802名が合格しました。合格率は12.13%。
行政書士試験の科目!科目別の難易度・出題傾向・勉強法や過去問
行政書士は絶対評価
行政書士試験は他の法律資格試験とは一線を画している部分があります。それは選抜方法。評価の出し方です。
通常の試験では成績上位何人までという受験生同士の競争の上で相対的に合否が決まります。これを「相対評価」と言います。
行政書士試験の場合は、何点取る含めて条件満たせば周り関係なく合格という、受験生同士の競争ではなく、自分が何点取るかで合否が決まるという「絶対評価」が採用されています。
ですから、合否は問題難易度に依存されているといえ、年度ごとの合格者の変動が比較的大きめという傾向があります。
行政書士憲法の問題数・配点
行政書士試験における憲法の問題数と配点を解説します。行政書士試験は5肢択一式・多肢選択式・記述式という3通りの問題が出題されます。憲法は5肢択一式で5問多肢選択式で1問の計6問、配点的には28点。各科目の問題数・配点の内訳は以下の通り。
行政書士試験の配点-科目別出題形式別得点配分と合格のための得点計画
5肢択一式 | 多肢選択式 | 記述式 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
憲法 | 5問(20点) | 1問(8点) | – | 6問(28点) |
行政法 | 19問(76点) | 2問(16店) | 1問(20点) | 22問(112点) |
民法 | 9問(36点) | – | 2問(40点) | 11問(76点) |
商会法 | 5問(20点) | – | – | 5問(20点) |
基礎法学 | 2問(8点) | – | – | 2点(8点) |
一般知識 | 14問(56点) | – | – | 14問(56点) |
合計 | 54問(216点) | 3問(24点) | 3問(60点) | 60問(300点) |
合格要件
行政書士試験は以下の3点すべて満たせば合格です。法令科目とは一般知識以外の科目です。
- 獲得点数が180点以上(総得点300点)
- 法令科目が50%以上(総得点244点)
- 一般知識が40%以上(総得点56点)
この3要件を別の言い方だ表現してみます。
合格するためには、
- 6割以上得点する
- 法令5科目で122点以上取る
- 一般知識で6問以上正解する
が必要。気にすべきは1と3です。1と3満たせば2なんて勝手に付いてきますから。特に3は重要です。
行政書士試験の足切り点は? 一般知識・法令別足切り回避して合格する方法
行政書士試験合格のポイント
行政書士は法律資格なので法令問題が重要ですが、キーポイント自体は実は一般知識です。理由は足切りがあるからです。足切りとは合格3要件のようにどれか1つ欠けていれば「切られる」ことを言います。
法令科目については、5科目まんべんなくというよりも、捨て科目あっても良しその分取れる科目で稼ぐという戦略が効率的だと思います。足切り回避しつつ全体て6割ですからそれほどハードルは高くありません。
行政書士試験合格のための基本戦略
以上踏まえると、行政書士合格戦略として、以下2点踏まえるべきです。
- 行政法・民法が苦手であってはならない
- 一般知識は6問正解しなければならない
この試験の最重要科目は行政法と民法。それは問題数と配点見れば明らかです。よって、ここが苦手だと点数は伸びませんので合格は厳しくなります。だから、民法と行政法は得意科目にしなければなりません。心許なければ憲法も準重要科目に入れます。
もう一点、一般知識には合格要件の3つ目、足切り点以上取る必要があります。40%以上とは6問以上の正解です。5問以下では要件1、2満たしても不合格ですから。この一般知識は法令科目とは別に、最低6問獲れるよう対策する必要がありあす。
行政書士憲法の出題範囲は?
行政書士では我が国の憲法である日本国憲法から出題されます。
日本国憲法は前文と103条の条文で構成されています。100条以降は補則規定なので実質前文と99条、これが試験範囲です。 この日本国憲法は11個(実質は10個)の章立てがなされていますが、それ踏まえて3つのカテゴリーに分類できます。
- 総論(1条~9条)
- 人権保障(10条~40条)
- 統治機構(41条以降)
日本国憲法の概要は日本国憲法とは?成り立ちから特徴・構成までわかりやすく解説でご確認ください。
行政書士憲法は難しい?
駆け足にですが行政書士試験についてお話しましたので、本題に入ります。
行政書士試験における憲法は難しい科目とは言えないと思います。科目自体は難しい科目と言え、例えば、予備試験の憲法は超が付くほど難しいですが、行政書士ではそれほど難しい問題はないという傾向が見て取れます。
それは、行政書士自体とた法律資格の難易度のバランスと行政書士の憲法と他科目のバランスがそうさせるのだと思います。やはり、法律資格最難関は司法試験予備試験ですし、民法行政法がメインの試験に脇役の憲法が難しいのはバランスを失しますから。
よって、行政書士の憲法は、決して難しい科目ではありません。適切に準備すれば得点源になり得ます。
行政書士憲法の学習ポイントは?
そんな行政書士憲法、学習ポイントはどこでしょうか。それには、出題傾向をしっかり見極める必要があります。
行政書士の憲法は2分野
その日本国憲法ですが、行政書士試験では2分野に分類しています。それは
- 人権分野
- 統治分野
「総論」は行政書士では「統治」に組み込まれています。で、この2分野ですが、出題傾向が異なります。
- 人権:判例知識
- 統治:条文知識
100%というわけではなく統治でも判例が重要になる箇所はありますが、傾向はそういった点が見られます。ですから、人権分野では判例、統治分野では条文、ここに対策のポイントを置くと良いでしょう。
ちなみにですが、最新の令和4年度試験では、以下のような内訳でした。5肢択一式5問に多肢選択式が1問です。
判例問題 | 条文問題 | |
---|---|---|
人権分野 | 3問 | – |
統治分野 | 2問 | 1問 |
この年の統治は先ほど言った「統治分野でも判例が重要になる箇所」=司法権がたまたま出題されたので、こういう結果になったのでしょう。統治分野はこのように出題個所によっては判例問題が出ることもありますが、人権分野では基本的に条文問題はありません。
実際に過去問見てみた
百聞は一見に如かずということで実際に問題見てみましょう。最新の令和4年度試験問題です。行政書士試験研究センターより。
令和4年度問題4、憲法の5肢択一式問題ですね。これは経済的自由の判例問題です。薬事法距離制限事件(最大判昭和50年4月30日)その他22条の判例いくつかの知識が問われています。
同じく令和4年度問題41、多肢選択問題。これはつい最近の判例ですが、司法権の限界案件ですね。ア、イは板まんだら事件あたり知っていれば解答できますが、全体的にはこの判例知っていれば確実だと思います。
- 人権分野は判例問題
- 統治分野は条文問題(司法権ば判例中心)
が出題される傾向が強いので、それぞれ適切な対策・学習をすること。
行政書士憲法のおすすめ勉強方法とは
行政書士憲法の出題傾向が分かり、そこに合わせた学習のポイントも把握いただけたと思います。では、そのポイントを基にどのような勉強方法がおすすめなのでしょうか。以下5点挙げてみました。
- 行政書士憲法は深追いしない
- 過去問中心に勉強する
- 学説と判例は分けて理解する
- 判例はポイント押さえて読み込む
- 条文暗記は条文単位ではなくテーマ単位でまとめる
順に解説します。
1.憲法は深追いしない
憲法はあまり深追いせず良い塩梅での割切りが必要と考えます。理由は、その時間・労力がもったいない、民法や行政法に使ってほしいのです。
先ほども言いましたが、行政書士は民法・行政法が最重要科目で憲法は法令科目では3番手です。つまり、憲法に費やす時間は3番手なりで良いのです。
ただ、学習すべきところは少なくないので、勉強時間は取らずとも効率的にメリハリ付けて勉強する必要はありそうです。
2.過去問中心に勉強する
行政書士は過去問中心の勉強を心掛けてください。勉強の流れとして、インプットしてその箇所の過去問を検討するというイメージです。
なぜ過去問中心なのか。行政書士は「過去問主義」といって過去出題された箇所が若干のカスタマイズを伴って再び出題されるということが多いです。つまり、過去問を勉強するということは、行政書士の出題傾向やレベルを知ることができ、合格レベルを知ることができるということになります。
2年に1問ぐらいか、「ん?ナニコレ」という問題が出題されたりしますが、そういうのは割り切って、過去問周辺だけは落とさないつもりで挑みましょう。
3.学説と判例は分けて理解する
憲法固有の勉強方法に入っていきます。人権分野は判例が大事と言いましたが、学説と判例を分けて理解していきましょう。学説は完全後回しでなんら問題ありません
憲法の勉強を進めていくとわかると思いますが、判例と学説は意見が異なることが多くはありませんがあります。ここをごっちゃになって理解していると大変なことになりかねません。行政書士の憲法は「最高裁の判例に照らして~」旨の問題が非常に多いです。学説聞かれることはごく稀です。
憲法の判例問題は、ある意味結論よりそこに至るまでの過程が大事だったりします(次の項で説明)。判例と学説が同じ意見なら問題はありませんが、学説と判例結論が違うということは過程も違います。
しっかり分けて理解してください。優先すべきはもちろん判例の方です。
4.判例はポイント押さえて読み込む
判例の勉強方法はやはり読み込むことがもっとも大事になってきます。ただ、小難しい文章を準備なくつらつらと読み込んでも、覚えるどころか理解もなかなか進まないと思います。
判例を読み込む際には飛ばしても良い部分は飛ばしてもいいから、ポイント押さえて読み込むことに注力しましょう。そのポイントとは「論理の流れ」です。民法では結論ありきで論理構成組んでる面もありますので、判例自体は多いのですが結論が重要視されますが、憲法は違います。
憲法は結論よりもそこに行くまでの過程(論理構成)が重要視されます。だから「はんれーはんれー」言われるのです。
具体的に、
- どんな事件?
- 誰と誰の戦い?
- 争点(論点)は?
- どんな規範が定立された?
- あてはめは?
- 結論は?
1と2は一緒くたにしてもいいかもしれませんが、5ないし6つのポイントごとに逐条的に論理の流れでまとめておけば整理しやすいと思います。文章になってる分理解しづらい部分もありますので、ぜい肉削ぎ落して体脂肪率0に近づけるイメージで核だけ抽出して整理しましょう。
憲法の多肢選択問題はほぼ判旨の穴埋め問題だし、5肢択一問題でも判旨について正誤付ける問題は多いです。理解が大事なのは言うまでもありありませんが、必要なワードはしっかり暗記する必要もありますので、その辺のバランスにも注力しておきましょう。
5.条文暗記は条文単位ではなくテーマ単位でまとめる
統治分野の勉強方法ですね。条文が大事と言いましたが、結局は暗記ということになると思います。なら四の五の言わずに覚えるしかないのですが、暗記のポイントをお話しましょう。条文暗記は条文単位ではなくテーマ単位で覚えると良いです。
例を挙げて解説しましょう。例えば「衆議院の優越」。衆議院の優越とは、参議院と比べて衆議院が優越される事項は何か?という話ですが、複数あり条文もバラバラです。ですから表など作って箇条的に暗記する方が効率的です。合わせて両院対等な事項も暗記するとなお良しです。
統治分野はこういうのがたくさんありますから、条文番号覚えるよしも、テーマ毎でまとめて覚える方が断然効率的です。
独学でおすすめの市販参考書はある?
行政書士を独学で学ぶにあたって、なにかおすすめしたい市販の参考書はあるでしょうか。
憲法の単体のおすすめ参考書は、行政書士では見当たりません。参考書はオールインワンものをおすすめします。理由は、専用でないと行政書士対策用に編集されていないからです。そうでないとハッキリって無駄ですし、効率的に勉強はできません。
おすすめオールインワン参考書と、判例集を一つづつ挙げてみました。
2023年版 出る順行政書士 合格基本書
LECが出している市販行政書士用対策参考書です。市販行政書士参考書は1冊でどうこうはいかないかなというのが私の意見ですが、そこ踏まえても出る順が一番いいかなと思います。
例によって分厚いですがサイズが手ごろ(A5)ですし、見やすいですね。携帯性重視ならkindle版もあるし、とりあえず勉強始めてみようかというのならベストと思います。
憲法判例50! 第2版 (START UP)
判例集は「判例百選」あたりが定番なのでしょうが、正直ちょっと見ずらいし行政書士向けかというとあまりそうは思いません。ですので、有斐閣の「判例STATUP」シリーズが良いと思います。
こちらは重要判例50を厳選して解説したものですが、非常にわかりやすい!解説が丁寧だし行政書士試験対策用として必要な事項がわかりやすく上がっていると思います。憲法判例集だったら、これ以外はないかなとすら思います。
おすすめの行政書士講座はある?
もう一つの勉強方法は講座になりますが、こちらもおすすめを挙げておきます。講座の有無は個人差です。独学でも合格は可能だと思います。が、講座の方が同じ合格でも格段に早く合格できますし、合格率も段違いに変わってきます。その分費用が掛かりますので、その辺が考えどころですね。
イマドキはオンラインの通信講座の方が通学よりも主流です。今どき行政書士通信講座を3校挙げてみましたので、興味あれば検討してみてください。
-
アガルート
- 受講形態:オンライン
- 受講費用:184,800円~(税込)
- おすすめポイント:優秀な講師による分かりやすい本格的講義と高合格率
-
スタディング
- 受講形態:オンライン
- 受講費用:34,980円~(税込)
- おすすめポイント:すき間時間学習に最適化されたカリキュラムと最安値の価格
まとめ
以上、行政書士憲法の学習ポイントとそこを踏まえた勉強方法についてお話させていただきました。
大事なのは、繰り返しますが、行政書士憲法はあまり深追いしないことです。あくまで2番手3番手ですから、ポイント押さえた効率的な勉強をすることが大事になってきます。
満点目指す必要はありませんが、憲法28点満点中20点以上は取りたいです。それができる科目だと思います。必要なら行政書士の通信講座を利用するのも手です。オンラインの講座はカリキュラムに沿った効率的な勉強ができますし、当然時短合格も可能です。
勉強時間はあまり取れないけど行政書士にはぜひとも合格したいという方は検討してみてもいいかもしれません。
行政書士試験には多くの受験生が集まってきますが、合格率は10%程度の難関試験です。 短期間勉強で上位1割に入るには、予備校を利用して勉強するのが最適な方法ですが、その予備校講座もどこを選んでいいのか、どんな視点で選べばい …