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難しい民法を簡単にする?

民法の93条~98条の「意思表示」という箇所があります。このうちの93条から96条までは意思表示の4類型が規定されています。「意思の缺欠」「瑕疵ある意思表示」なんて言ったりもしますが、この部分は民法では非常に重要なところで、試験という試験でよく出題されています。

この部分を勉強していくと初期の段階で、「意思主義」「表示主義」という単語が出てくると思います。この「意思主義」「表示主義」とはどういう意味なんでしょうか。この単語自体の意味は別に難しくも何ともありませんが、とても難しい民法を少しだけ簡単にできるヒントが隠されているのです。

どんなことが隠されていうのですかね…

93条を例に「意思主義」「表示主義」を解説

「意思主義」「表示主義」とは、その規定がどういった意図を持っているのかを表したものです。

  • 意思主義・・・表意者保護の傾向
  • 表示主義・・・取引安全の保護の傾向

93条を例に挙げてみましょう。

民法第93条【心裡留保】
意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

本文は「その効力を妨げられない」ですから、その法律行為は有効、つまり、内心と意思表示が食い違っていても、その表示行為が尊重されます。つまり、表示主義。取引安全が保護されます。しかし、その意思表示が真意でない、あるいは、真意でないことを知ることができた場合には無効となる、つまり意思主義です。

事例を挙げて解説

「この500万円で買った車を君に2万円で売るよ」そんな気もないのに言ってしまったことは、言われた方が真に受ければその約束は有効ということになります。なぜ表示主義なのかというと、内心と言っていることが違う認識があるのに出まかせを言ってしまった者を保護するよりもそれを信じてしまった相手方を保護すべきという価値判断です。「取引安全の保護」ですね。

しかし、但し書では言われた方が「これは嘘だな」とか、「本当ですか?」も何も言わずに信じてしまった場合には無効になりますとしています。つまり、相手方は内心と表示意思が違うことを知っていた(悪意)、または知ることができたのにしなかった(有過失)場合には、それは相手方を保護する必要なし、だから無効、という価値判断が働きます。

民法は原則「表示主義」、例外「意思主義」

何が言いた言いかというと、民法は「この人を法律によって守るべきか?相手方を守るべきなのか?」という選択で揺れ動いているのです。ですから、この93条のように状況によって結論が真逆になったりするのですね。93条のようにちゃんと原則と例外が規定されていればまだいいですが、規定されていないのに状況が変わってしまう場合もあるのです。

それはその都度対応していくしかないのですが、民法は原則「表示主義」、例外的(限定的)に「意思主義」と覚えておくと良いです。

下に意思表示の規定の構成を表にして載せておきました。確認しておくと良いと思います。

原則 例外
心裡留保(93) 表示主義(本文) 意思主義(但書)
通謀虚偽表示(94) 意思主義(Ⅰ) 表示主義(Ⅱ)
錯誤(95) 意思主義(本文) 表示主義(但書)
詐欺/強迫(96) 意思主義/意思主義(Ⅰ) 表示主義/なし(Ⅲ)

民法第96条「詐欺 強迫」を取り上げてみる

表をご覧いただいておかしな点にお気づきになれませんでしょうか。96条です。詐欺と強迫が同一の規定なのですが、この2つ、同じ規定なのに全く違う性格を持っておることに気づきませんでしょうか。

(詐欺又は強迫)
第九十六条
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

詐欺師には気を付けてください

なぜこんなことになるかというと、強迫については詐欺とは状況が違うからです。原則はいずれも意思主義で表意者は保護されます。しかし、3項では詐欺は表示主義、強迫は適用すれされません。つまり、強迫はそれだけ本人保護の必要があるからです。強迫は例外規定なく意思主義なのです。

強迫以外の意思主義規定は?

この強迫の他に意思主義なのは制限行為能力者制度に列挙される成年被後見人・被保佐人・被補助人・未成年です。これらも本人を保護してあげなければならない強い理由があるのです。一部表示主義になる規定もありますが、原則意思主義です。

まとめ

繰り返しますが、民法は難しいですがこの表示主義と意思主義原則・例外、誰(何)を法的保護するべきか?という価値判断が優先するかという選択が常にあるということを知っておけば、何割かは簡単に考えられるのかなと思います。

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