交通事故

宅建行政書士

ある程度民法の勉強が進んでいる方の中には「民法=債権債務の話」と考えている方も多いのではないでしょうか。債権債務は契約によって発生するものが基本ですが、契約によらないで発生する債権債務が大きく分けて3つあります。

そのひとつが「不法行為」。この不法行為、民法709条以下に規定されていますが、行政書士試験や宅建士試験などでも最頻出の一つに挙げられるほど試験において重要です。ちょっとこの民法709条の不法行為についてお話していきましょう。

不法行為とは

民法第709条【不法行為による損害賠償】

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

意義

不法行為とは、ある者が、他人から違法行為による損害を加えられることであり、その損害を与えた者に対して損害の賠償を請求する制度を言います。

この不法行為、典型例で言えば交通事故でしょうか。

不法行為(交通事故)のイメージ図

交通事故は、ほとんどの場合、加害者側のスピード超過やよそ見運転等、違法行為によって発生します。もちろん、被害者と加害者の間には契約行為は存在しません。この不法行為が発生することによって、被害者と加害者の間に不法行為による損害賠償請求の債権債務が発生するのです。

要件

この不法行為の成立要件はどんなものがあるのでしょうか。要件は大きく分けて4つ。

  1. 故意または過失による加害行為によって
  2. 損害が発生
  3. その加害行為と損害発生の間に因果関係がある
  4. 加害者に責任能力がある

以上4つですが、それぞれ解説していきます。

要件の解説

上の交通事故で説明します。

この事故は運転手(加害者)の前方不注意によって発生してしまいました。つまり、過失による加害行為です(要件1)。そして、被害者は大けがを負ってしまい(要件2)、それは加害者が被害者を轢いてしまったことによるもの(要件3)で、加害者は一人で問題なく社会生活を送れる精神状態である成人です(要件4)。

ご覧のように、不法行為成立です。これで、被害者は加害者に対して不法行為に基づく損害賠償請求権という債権が発生し、逆に加害者には当該被害者に対して不法行為に基づく損害賠償請求債務という債務が発生します。

効果

ご覧のように、不法行為の要件を満たせば、それぞれに不法行為に基づく損害賠償請求の債権債務が発生します。ではこの損害賠償、どのような形で賠償されていくのでしょうか。

損害賠償は金銭によって賠償されるのが原則です(722条1項)。ただし、不法行為の内容によっては金銭賠償でない方が適している場合があると法は定めています。それは名誉棄損の場合。お金貰って終わりですというよりも、名誉の回復の方が大事ですよね?裁判所はそういった判断をして命令を出すこともも可能です(723条)。

損害賠償請求できるのは被害者本人だけ?

不法行為に基づく損害賠償請求は債権者である被害者本人がなしうるわけですが、では本人以外の者はできないのでしょうか。

711条では、不法行為による生命侵害の場合は被害者の父母・配偶者・子等の近親者が加害者に対して慰謝料請求ができると規定しています。判例ではこの「近親者」については、「祖父母・舅・兄弟姉妹・内縁配偶者」も711条に列挙されている近親者と同視できるとしています。

ちなみに、この損害賠償請求権は債権ですから相続対象になり得ます。被害者死亡の場合には、被害者の意思表示の有無にかかわりなく相続対象となります。

過失相殺について

交通事故などでもよくあることですが、「事故に遭った被害者に非はないの?」という問題。信号無視をした被害者と前方不注意の加害者。こうなると「加害者が100%悪ではないよね。被害者にも過失はあるよね」ということになります。つまり過失相殺の問題ですが、賠償額確定に大きくかかわってくる問題です。

民法でも過失相殺の規定は存在し(722条2項)、裁判所は被害者にも過失が認められる場合には賠償額を減額することができるとしています。ただし、不法行為の過失相殺は、債務不履行の過失相殺(418条)とは異なり、賠償額減額にとどまり全額免除ということはありません。相殺されたとしても加害者は一定の賠償はすることになります。

不法行為の消滅時効

民法には「時効」という制度があり、一定期間権利行使しないとその権利が消滅してしまいます。不法行為に基づく損害賠償請求権も債権ですから消滅時刻にかかります。

724条では、その不法行為の消滅時効の起算点と期間が定められています。2通りあります。

  1. 損害および加害者を知った時から3年
  2. 不法行為発生時から20年

例えば、子供をひき逃げ死亡事故で失った親が、事故から10年後に執念で犯人を証拠と共に突き止めます。加害者を突き止めた日が起算点ですから、ここから3年間の余裕をもって不法行為に基づく損害賠償請求ができます。しかし、20年以上経過した後に突き止めたとすれば権利行使はできません。

不法行為と債務不履行の比較

この不法行為とちょっと似た制度に債務不履行というものがあります。債務不履行は契約に基づくものですから不法行為とは根本は大きく異なるのですが、各論では混同しやすい部分が少なくありません。そこで、債務不履行と不法行為を比較した表を作成してみましたので、試験準備の際にはご利用ください。

不法行為 債務不履行
帰責事由の立証責任 債務者 被害者
消滅時効起算点と期間
  • 損害および加害者を知った時から3年
  • 不法行為発生時から20年
履行請求時から10年(167Ⅰ)
損害賠償の範囲 416条 416条類推
過失相殺 賠償額算定について考慮できる(722Ⅱ) 418条
慰謝料請求 被害者の近親者も可(711) 債権者のみ

まとめ

以上、民法709条の一般的不法行為についてはまとめてみました。「一般的」とあるぐらいですから、不法行為にはいくつかのバリエーションがあり、それぞれ代わる代わるに試験に出題されます。

また、行政書士受験生の方にとっては、行政法の国家賠償法もこの民法709条不法行為が密接に関係してきますので、まずはこの一般的不法行為をマスターしてからそれぞれに手を付けていくと良いと思います。

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