在監者の人権制約について
在監者というのはどういう者なのでしょうか。在監者とは、受刑者のほか、刑事被告人や被疑者等で拘置所等に拘禁中の者をいいます。
つまり、在監者には大きく分けて2種類あるということを認識して頂ければと思います。
それは、起訴前(被疑者)、起訴後(被告人)の未決拘留者と、判決確定後の在監者です。
在監者は勾留されているので、「合法的に」身体的自由に大きな制限を受けています。
ただ、在監者といえども、何らかの理由があって特別な法律関係に入ったにせよ、一般の国民には違いはありません。
その点踏まえて、その人権制約の根拠と、その制約はどこまで許されるのかを考えてみたいと思います。
制約の根拠
- 第18条【奴隷的拘束及び苦役からの自由】
何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
- 第31条【法定の手続の保障】
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
上の2つの憲法規定は、「人身の自由」の総論的規定と言われています。
18条の方は意味合いもわかりやすいと思いますが、31条の方は刑法の基本銀理である「罪刑法定主義」の根拠条文と言われています。
つまり、憲法自体が在監者の存在とその自律性を認めているといえるでしょう。
「存在」と「自律性」については、公務員の人権制約の根拠についてお話した際と同様と思って頂いて結構です。そこに「在監目的」という言葉に置き換えて頂ければよろしいと思います。
そして、公務員の場合と同様、その人権制約は必要最小限でなければなりません。
具体例
それでは、これまで在監者の人権制約について、どんなことが議論に挙げられたのか、いくつかお話していきます。
喫煙の自由
まず、喫煙の自由についてですが、真正面から憲法で保障されている人権には至っていないということを認識しておきましょう。 「新しい人権」の設立基準の採り方によっても変わってきますし。
さらに、判例と学説では判断基準の違いで結論が変わってきています。これは、「重要判例 猿仏事件」のところでもお話していますが、判例では公務員の人権制約について、 相対的にですが少々厳格な判断を示しているようで、それは、在監者においても同様の傾向があるように感じています。
というわけで、違憲審査基準の違いもありますので、ここでは判例だけ少しご紹介しておきましょう。
- 被拘禁者の喫煙禁止(最判昭45.9.16)
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勾留されている在監者に対して喫煙を禁止する監獄法施行規則96条が違憲であるかが争われた事案
未決拘留者は、刑事訴訟法に基づき、逃走または罪証隠滅の防止の目的・・・監獄内においては・・・秩序を維持し、正常な状態を保持よう配慮が必要・・・ 右の目的に照らし、必要な限度において、被勾禁者のその他の自由に対し、合理的制限を加えることもやむをえないところ・・・
かかる観点よりすれば、喫煙の自由は、憲法13条の保障する基本的人権の一つに含まれるとしても、あらゆる時、所において保障されなければならないものではない・・・
閲覧の自由
こちらも、学説との乖離がありますので、判例だけご紹介しておきます。
- よど号ハイジャック記事抹消事件(最判昭58.6.22)
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監獄内の規律及び秩序の維持のためにこれら被拘禁者の新聞紙、図書等の閲読の自由を制限する場合においても、それは、 右目的を達するために真に必要と認められる限度にとどめられるべき・・・
当該閲読を許すことにより右の規律及び秩序が害される一般的、抽象的なおそれがあるというだけでは足りず ・・・その閲読を許すことにより監獄内の規律及び秩序の維持上放置することのできない障害が生ずる相当の蓋然性があると認められることが必要・・・ かつ、その場合においても、右の制限の程度は、右の障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまるべきもの・・・
