公務員の政治活動と猿払事件

公務員にも政治活動の自由はもちろん保障されています。この場合、15条や21条の「表現の自由」によって保障されています。

しかしながら、公務員という特別な法律関係に入った者は一般国民とは異なった、制約を受けることになっています。

そこで、公務員の政治活動の自由は制約を受けるのでしょうか。

特別権力関係理論を否定している以上、公務員の人権制約には法律が必要ですが、既に法律によって制約を受けることが規定されています。国家公務員法の102条1項です。

国家公務員法102条1項【政治的行為の制限】

職員は、政治又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らかの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権 の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。

どんな目的が「政治的目的」なのか、あるいはどんな行為が「政治的行為」なのかが不明ですよね。この「政治的目的」、「政治的行為」について定義しています。 すべてではありませんが、いくつかピックアップしてみました。

人事院規則14-7

人事院は、国家公務員法 に基き、政治的行為に関し次の人事院規則を制定する。

(政治的目的の定義)
5  法及び規則中政治的目的とは、次に掲げるものをいう。政治的目的をもつてなされる行為であつても、第六項に定める政治的行為に含まれない限り、法第百二条第一項の規定に違反するものではない。
一  規則一四―五に定める公選による公職の選挙において、特定の候補者を支持し又はこれに反対すること。
三  特定の政党その他の政治的団体を支持し又はこれに反対すること。
四  特定の内閣を支持し又はこれに反対すること。
五  政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し又はこれに反対すること。

(政治的行為の定義)
6  法第百二条第一項の規定する政治的行為とは、次に掲げるものをいう。
一  政治的目的のために職名、職権又はその他の公私の影響力を利用すること。
五  政党その他の政治的団体の結成を企画し、結成に参与し若しくはこれらの行為を援助し又はそれらの団体の役員、政治的顧問その他これらと同様な役割をもつ構成員となること。
七  政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し、編集し、配布し又はこれらの行為を援助すること。
九  政治的目的のために署名運動を企画し、主宰し又は指導しその他これに積極的に参与すること。
十一  集会その他多数の人に接し得る場所で又は拡声器、ラジオその他の手段を利用して、公に政治的目的を有する意見を述べること。
十三  政治的目的を有する署名又は無署名の文書、図画、音盤又は形象を発行し、回覧に供し、掲示し若しくは配布し又は多数の人に対して朗読し若しくは聴取させ、あるいはこれらの用に供するために著作し又は編集すること。

ご覧のように、公務員は政治活動について、特別の制約を受ける法律が存在しますので、この国家公務員法と人事院規則の合憲性、正当性を検討してみましょう。

この点、「猿払事件」という有名な最高裁判決があります。

この事件は、北海道猿払村の郵便局に勤務し、同地区の労働組合に所属する職員が、昭和42年の衆議院選挙の際、勤務時間外に日本社会党を支持する目的を持って選挙用ポスターを掲出しました。この行為が先の国家公務員法の規定に抵触し、罰金を命じられる刑事罰事件に発展しました。

そこで、この規定の合憲性が問われる裁判の最高裁判決です。

行政の中立的運営が確保され、これに対する国民の信頼が維持されることは、憲法の要請にかなうものであり、公務員の政治的中立性が維持されることは、国民全体の重要な利益に他ならない・・・公務員の政治的中立性を損うおそれのある政治的行為を禁止することは、 それが合理的で必要やむを得ない限度にとどまるものである限り、憲法の許容するところである

つまり、公務員の政治的中立性は国民全体の重要な利益であり、この政治的中立性を損うほどの政治活動は許されない、ということです。

そして、判旨では当該法律が違憲か合憲かの判断をしています。

行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保するための措置の目的は正当で・・・公務員の政治的中立性を損うおそれがあると認められる政治的行為を禁止することは禁止目的との間に合理的な関連性がある

(これにより)得られ利益は、失われる利益に比して重要

つまり、公務員の政治活動を規制する措置は、規制の目的が正当であり、目的と規制手段との間に合理的関連性があり、また、禁止によって得られる利益は失われる利益に均衡が取れていれば合憲である、という規範を立てました。

この判決は、学者から批判があったりしますが、国家公務員法102条等を合憲としました。



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