プライバシー権の意義と内容
「プライバシー権」とは聞いたことあるかもしれませんが、具体的にどのような権利でしょうか。
プライバシー権という権利について言及されている裁判の一部をご紹介します。
- 「宴のあと」事件(東京地裁判昭39.9.28)
「私事をみだりに公開されないという保障は、不法な侵害に対して法的救済が与えられる人格的な利益であり、いわゆる人格権に包摂されるが、なおこれを一つの権利と呼ぶことを妨げるものではない」
- 京都府学連事件(最大判昭44.12.24)
「個人の私生活の自由のひとつとして、何人も、その承諾なしにみだりにその容貌・姿態を撮影されない自由を有するものというべき・・・警察官が、正当な理由もないのに、個人の容貌等を撮影することは、憲法13条の趣旨に反し、許されない」
このように、プライバシー権は、憲法13条で保障される人権であると認めており、その意義は概ねですが「私生活をみだりに公開されない権利」としているようです。判例ではこのようなニュアンスで使われていますが、学説ではもう少し発展した定義付けがなされています。
皆さんも何らかの形で一度ぐらいは経験されているかと思いますが、ご自身の個人情報が自分の意図しない形で他人に流されているなんてことを。私も何度かありました。
こういった事態を鑑み、数年前に個人情報保護法なる法律が制定されています。この法律は、「私生活をみだりに公開されない権利」の保護という面ももちろんあるわけですが、それをもっと発展させて国民個人個人の情報の取り扱いについて規定されている法律になっています。
一定数の個人情報を保有している業者・行政機関に対して、その情報の取り扱い義務や第三者提供の制限や訂正請求、開示請求など様々な請求が出来るように規定されています。
このように、プライバシー権とは、「私生活をみだりに公開されない」権利に留まるものではなく、自身の個人情報をその個人が情報としてコントロール出来るものとして扱うべき権利なのではないか、と学説上は考えていきます。
学説上では、プライバシー権の意義は「自己の情報をコントロールする権利」とするのが有力とされています。
もっとも、判例でもプライバシー権をこのように請求権的側面もあると認めていますし、だからこそ個人情報保護法なる法律が制定されたと言えるでしょう。
- 「エロス+虐殺」事件(東京高裁判昭45.4.13)
「人格的利益を侵害された被害者は、また、加害者に対して現に行われている侵害行為の排除を求め、あるいは将来生ずべき侵害の予防を求める請求権をも有する」
ひとつの問題意識として言えることですが、このプライバシー権、21条の「表現の自由」と衝突するケースが多々あります。13条と21条の衝突です。
典型例で言えば、芸能人や政治家のプライバシーを暴く報道です。13条で保障されているプライバシー権と、21条で保障されている報道の自由です。
このような場合は、「公共の福祉」によって一定の調整が図られていたりしますが、そうでない場合もあります。そのような場合は、どちらの人権を重視すればいいのか、個別に判断していきます。
上の例で言えば、13条と21条のどちらを重視していくべきなのか、また、芸能人と政治家を同様に扱っていくべきなのか、その報道はどのような内容・程度だったのか、など。
このような事例は日常のようにありますので、それぞれ考えてみるのも良いかもしれません。
- 前科者照会事件(最判昭56.4.14)
区役所が弁護士からの前科及び犯罪歴の照会に応じていたことがプライバシーの侵害にならないかが争われた
「前科等及び犯罪歴は人の名誉、信用に直接にかかわる事項であり、前科等のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有する」
- 最判平7.12.15
「指紋は、指先の紋様であり、それ自体では個人の私生活や思想、信条、良心等個人の内心に関する情報となるものではないが、性質上万人不同性、終生不変性をもつので、採取された 指紋の利用方法次第では個人のプライバシーが侵害される危険性がある・・・個人の私生活上の自由の一つとして、何人も指紋の押捺を強制されない自由を有する・・・」
