制度を以て人権を保障するとは
「人権を保障する」というのは、文字通り、個々人が有している人権が国家権力によって侵害されないよう、憲法によって保障していくということです。
これが通常の形態の「人権保障」なのですが、中にはちょっと変わった人権保障の形態もあります。
「~権」という人権ではなく、とある「制度」に対して、立法によってもその制度の核心ないし本質的なものを侵害させないというある特別な保護与えてその制度を保障していくという人権保障形態があります。
これを制度的保障と言います。
議会にはこの憲法が定める「制度」を維持する義務があり、その本質部分を侵害するような立法は禁止していくと考えていきます。制度を守ることによって人権を保障していく、という考え方ですね
この考え方は、戦前あたりの、「法の支配」ではなく、法治主義的国家下において創出されたものです。
以前の法治主義国家においては、議会の力が強く、法律という形式さえ取っていれば、いくらでも憲法による人権保障の範囲を狭めることが可能でした。この弊害を阻止するべく考えだされた理論がこの制度的保障です。
日本国憲法と制度的保障の関係
では、この制度的保障は日本国憲法においてどのように生かされているのでしょうか。
日本国憲法では、「法の支配」を採用しているので、議会(国会)も憲法によって拘束されており、立法によって「制度」という人権保障が侵されることは許されませんので、制度を保障する意義はそれほど大きくありません。
また、ヘタに制度的保障なる言葉を使ってしまえば、「制度の核心部分を侵さないのだから、この程度の法律による制約なら大丈夫」とか言って、人権保障範囲を狭められる恐れもあります。
そういう意味においては、制度的保障と日本国憲法の相性はあまりよろしいとは言えません。
だからと言って制度的保障の理論を日本国憲法において排除するのは、得策ではありません。
「人権の法規範性・裁判規範性」でも述べていますが、人権保障には法整備が必要ですから、議会の立法裁量はその分広いと言えます。
ということは、人権を侵害する場面もその分多いわけで、そのような場面では制度的保障も、人権侵害の一定の歯止めになります。
ですから、制度的保障には懐疑的立場を持ちつつ、
- 立法によっても侵すことのできない当該制度の核心部分が明確
- 制度と人権の関係が密接
であれば、制度的保障論を用いてもいいのではないかと考えていきます。
日本国憲法において制度的保障の理論を用いることが認められる規定としては、政教分離原則(20条1項後段他)、大学の自治(23条)、婚姻制度(24条)、私有財産制度(29条)、地方自治制度(92条)などが代表的です。
