憲法の勉強法方法は

行政書士試験の科目の中に憲法があります「(行政書士試験の科目」)。その憲法、「苦手だよ」とか「難しい」という受験生が一定数いるようです。

なるほど、そうかとは思いましたが、行政書士の憲法、実はハッキリした傾向があるので対策はしやすい科目ではあります。最重要科目でもありませんが、決しておろそかにはできない科目、憲法の勉強方法について解説したいと思います。

憲法とはどういった科目か?から、過去問に見る出題傾向や重要判例の見方、そしてそこから踏まえた勉強方法と、一連の対策までお話したいと思います。

憲法はどういう科目か

憲法という科目については上のリンク「行政書士試験科目」憲法の項目に詳しくありますのでここでは簡潔にまとめます。 平たく言えば、憲法とはその国の基本法です。憲法にある規定を基本としてその国は運営されていくのです。

国家運営は法律がなければ動いていきませんが、その法律も憲法がベースになっているのです。憲法は、いわばすべての法律の拠り所と言えます。 行政書士試験では、我が国の現行憲法である日本国憲法から出題されます。5肢選択式5問(20点)、多肢選択式1問(8点)の6問28点です。

日本国憲法とは

日本国憲法は前文と103条の条文で構成されています。100条以降は補則規定なので実質前文と99条、これが試験範囲です。 この日本国憲法は11個(実質は10個)の章立てがなされていますが、それ踏まえて3つのカテゴリーに分類できます。

  • 総論(1条~9条)
  • 人権保障(10条~40条)
  • 統治機構(41条以降)

総論では国民主権(象徴天皇)や天皇、戦争の放棄が規定され、人権保障には国民の人権保障についての規定です。統治機構は国家権力の規定です。

行政書士憲法の出題傾向とは

傾向 先ほども言いましたが、行政書士の憲法は割とはっきりした出題傾向があります。それは、判例と条文です。判例知識と条文知識、ここを問われます。

しかも、人権保障は判例、総論+統治機構は条文を問われる傾向が強く、対策もそこを意識して勉強をすればよいでしょう。 では、判例と条文、どういう勉強をすべきなのでしょうか。

過去問から重要判例問題を読み解く

判例問題とはどのような問題なのでしょうか。実際に過去問で確認してみたいと思います。ちょっと古めですが、平成25年本試験41問目、多肢選択式問題です。

次の文章は、ある最高裁判所判決の一節(一部を省略)である。空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。 確かに、[ ア ]は、民主主義社会において特に重要な権利として尊重されなければならず、被告人らによるその政治的意見を記載したビラの配布は[ ア ]の行使ということができる。しかしながら、・・・憲法21条1項も、[ ア ]を絶対無制限に保障したものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を是認するものであって、たとえ思想を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されないというべきである。本件では、[ イ ]を処罰することの憲法適合性が問われているのではなく、[ ウ ]すなわちビラの配布のために「人の看守する邸宅」に[ エ ]権者の承諾なく立ち入ったことを処罰することの憲法適合性が問われているところ、本件で被告人らが立ち入った場所は、防衛庁の職員及びその家族が私的生活を営む場所である集合住宅の共用部分及びその敷地であり、自衛隊・防衛庁当局がそのような場所として[ エ ]していたもので、一般に人が自由に出入りすることのできる場所ではない。たとえ[ ア ]の行使のためとはいっても、このような場所に[ エ ]権者の意思に反して立ち入ることは、[ エ ]権者の[ エ ]権を侵害するのみならず、そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものといわざるを得ない。
    1. 出版の自由
    2. 統治
    3. 集会の手段
    4. 良心そのもの
    5. 出版それ自体
    6. 良心の自由
    7. 管理
    8. 居住の手段
    9. 居住・移転の自由
    10. 表現の自由
    11. 集会それ自体
    12. 良心の表出
    13. 支配
    14. 集会の自由
    15. 出版の手段
    16. 居住
    17. 表現の手段
    18. 居住それ自体
    19. 所有
    20. 表現そのもの
行政書士試験本試験 平成25年出題

この問題は実際の最高裁判例(平成20年4月11日)の判旨を引用したものです。これは政治ビラを公務員宿舎敷地に不法侵入して投函、見つかり不法侵入罪で捕まったことが、表現の自由を侵害するものとして争われた事件です。

解答のポイントは?

この問題の解答のポイントとしては、次の2点を挙げることができます。

  1. 全体通して表現の自由に関する判旨である
  2. ビラ配布という表現行為の「手段」の問題である

の2点。2点気づけば正解は半分出たようなものです。

方向性が判明したのであとは肢のチョイスの問題です。この事件、正直言いまして私は知りませんでしたが、重要判例をしっかり勉強している人は正解を導くことは可能だったと思います。 というのは、この事件は憲法の重要判例の一つ「猿払事件」に図式が似ているので、しっかり準備していれば4か所のうち3つくらいは容易く正解出せると思います。

このように、行政書士試験は重要判例そのもの、あるいは類似の判例を出題することが少なくありません。

重要判例の勉強方法とは

このように、憲法の人権保障問題において、重要判例の理解がいかに重要かお分かりいただけたかなと思います。ではどう勉強すればいいのでしょうか。 とにかく、重要判例をしっかり読み込んでほしいと思います、以下の4点留意しつつ。

  • どういう事件なのか
  • どこが争点になったのか
  • どういう規範が定立されたのか
  • どういった結論が導かれたのか

こういったことを意識しつつ、しっかり重要判例を読み込んで理解してほしいと思います。箇条書きで理解して行く方法は、整理しやすいし覚えやすいかもしれません。

それぞれ正確に理解しておかなければなりません。過去問は多肢選択式問題を挙げましたが、5肢選択式問題については方向性は同じ、つまり勉強方法も同じとお考え下さい。

マクリーン事件で例えてみた

憲法でもっとも重要かつ有名な重要判例「マクリーン事件」を例にしてみます。だいぶ端折りますので大部分はみなさんで勉強してください。

  • 政治活動をしていた在留外国人宣教師マクリーン氏が在留許可延長を求めたところ却下、訴える
  • 外国人に(出入国・在留の自由、)政治活動の自由が認められるのか
  • 権利の性質上日本国民のみ対象とする人権を除き外国人にも認められる
  • 日本人に影響を及ばさない範囲で政治活動の自由も外国人に認められる、政治活動が在留許可延長に影響を及ぼしても仕方がない

かなり端折っていますが、こういったことを正確に理解しておく必要があります。どこまでやる必要があるかは受験生が判断するのは難しいですが、予備校のノウハウに頼るのが正確かつ確実でしょう。

条文の勉強方法とは

暗記する女性 条文の勉強方法はどうすればいいのでしょうか。こちらは、基本的に理解というよりも暗記というイメージの方が近いでしょうか。例えば、衆議院の優越について。

第六十条【衆議院の予算先議と優越】 1 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。 2 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律(国会法第八十五条)の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

こういうのは、理解というよりも暗記しないと何も始まりませんから、第一に覚えましょう。また、この衆議院の優越には落とし穴があります。60条に載っていないので落としがちですが、

第六十一条【条約の国会承認と衆議院の優越】 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。

61条(67条も)も一緒に加えてあげてください。

条文理解は横方向で覚える

また、手続規定はその条文だけで完結するわけではありません。例えば、内閣総理大臣は国会が議決によって指名しますが、これで終わりではありません。天皇の任命が必要です(6条)。 このように、手続条項はその条文だけでは終わらず、他の条文に飛ぶことも少なくありません。ので横方向で覚えていく必要がありそうです。

場合によっては、手続順に条文を並べて覚えると整理ついて良いかもしれませんね。

第六条【天皇の任命権】 1 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。 2 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。 第七条【天皇の国事行為】 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。 一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。 二 国会を召集すること。 三 衆議院を解散すること。 四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。 五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及 び公使の信任状を認証すること。 六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。 七 栄典を授不すること。 八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。 九 外国の大使及び公使を接受すること。 十 儀式を行ふこと。

条文理解はちょっと複雑になりがちですので、暗記を助けるためにも工夫して仲間作って整理すると良いと思います。

まとめ

以上、行政書士憲法の勉強方法についてお話してきました。ちょっと注意が必要なのは、人権保障=判例、統治機構=条文はその傾向が強いだけであってそれがすべてとは思わないでください。そうでない場合もあります。

実際、統治機構で判例問題も出題されていますし。 判例にせよ条文にせよ、大事なのは正確性です。正確な知識がないと正解にたどり着けない可能性が高く、せっかくわかったのにそれが「つもり」だったなんてもったいなさすぎます。 また、特に重要判例についてですが、どの判例がどのくらい重要か、重要判例はどこまで覚えていくべきなのかは、日ごろ本試験をつい研究しているプロに意見を仰いだ方が無難だしそうするべきだと思います。

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